今年も研修医マッチングの時期が迫ってきました。勿論、信州大学のプログラム選択者数は気がかりですが、今年は、東北/北関東の医学部卒業者がどこを研修先病院に選ぶか気になります。少し引用が長いですが、ある新聞の論説で以下のように書かれていました。「...東日本大震災は日本列島の国土のあり方に大きな変更を迫っている。いろいろな意味での国土の分散化が必要であるし、それぞれの地域が独立した存在としての実力を蓄えていることが期待されている。...(中略)...日本の医療は既得権益と前例に縛られて、身動きが取れなくなっている。東北地方の医療は、そんな不自由な「本土並み」医療に戻してはいけない。大胆な医療の地域再編を行い、情報化などの分野で最先端の仕組みを導入し、地域医療の先端事例を作り上げてほしい。創造的破壊という言葉があるが、破壊を素晴らしい創造に結びつけたいものだ。」(産経新聞 伊藤元重)
どんな組織であれ、時代とともに必ずシステムが硬直化し、いずれ創造的破壊が必要となります。しかしシステムを作った当事者が破壊に向かうのは難しいため、破壊のためには既存の考えにとらわれない、若い力を結集することが不可欠となります。そして破壊だけではなく、創造をセットとして行うためには、創造した結果に責任を持つ者が、その任に当たらなければなりません。こうして唯一、若者だけが創造的破壊を達成できるのです。
東北/北関東の医学生が卒後、東北/北関東の医療再生に邁進するかどうか、日本再生の試金石かも知れません。そして東北に限らず、各地の医学部卒業生が、それぞれの地域の医療再生を目指し創造的破壊に邁進することこそが、この国の医療再生には不可欠です。
僕は震災の年である今年から医学生の意識が変わり、卒業大学に留まり地域の医療再生を目指す若者が増えるではないかと思っています。決して大多数ではないかも知れない。しかし確実にそうした若者が増えていくと願っているのです。有名病院?の意味不明な「有名」という文言には見向きもしない、長期的な展望を持った若者が増えて欲しい。
それでもやっぱり今年も、大震災なんか無関係とばかりに、初期研修先に都市部の有名病院を志望する地方医学部卒業生が多いのでしょうか。しかし、それはまだいい方かも知れない。今回の震災の後でも、2年間の夏休みとして称して、観光気分で沖縄や北海道を初期研修先に選ぶ人たちがいるのでしょうか。今後もこうした傾向が続くのなら、この国の復興などありえない。その時私たちは、国の将来を託すべき若者をなくしたという、厳しい現実に直面するのかも知れません。
これから数ヵ月間、今年の研修医マッチングの結果を、僕はドキドキしながら見ることになると思います。