2010年4月25日日曜日

谢谢 神経男/女

第14回日本神○麻▲集□治療研究会が終了しました。教室の皆さんは会の運営で大変だったでしょうし、大学で待機して手術室を守ってくれた人も御苦労さまでした。若い教室の人が一所懸命やっていて、活気があって気持ちのいい会だったと、何人ものおやぢ麻酔科医に褒められました。教室の皆さんの働きに感謝するとともに、皆さんのことを誇りに思います。教室からの発表も堂々としていてよかったと思います。御苦労さまでした。

麻酔科で神経に興味がある神経男/女の先生方が、信州松本に結集して1.5日間、いろいろと討議できて有意義でした。全国の若い人たちがいい発表をしていたので、初期研修制度以降、研究する人たちが減ったといわれていますが、この分野にはまだまだ若者の参入があると心強く思いました。

シンポジウムの内容もよくまとまっていたし、脳外科の本郷教授と臓器発生制御の新藤先生の特別講演も、大変興味深かったです。他施設の先生も感心していました。ともあれ、明日から日常に戻りますが、会をきっかけに日常の臨床麻酔を深めたり、新たな研究活動が生まれるといいなと思います。まずは無事終わってよかったです。

2010年4月22日木曜日

研究会前夜

明日から1.5日間で、第14回日本神○麻▲集□治療研究会というのを信州松本で開催します。医局員に○、▲、□を埋めなさいといっても、正答率は50%を切ると思うね。まあコアなメンバーばかりの小さな研究会です。でも1年で一番の楽しみにしているメンバーもいるので、楽しい研究会になればと思います。

研究に流行は要らない、地道かつ本質的な研究だけでいいと思っていました。しかし多くの人々が共通の考え方や手法を使って同時代的に研究をすると(これを流行というのですね)、一気にbreak throughする場合があることを知りました。もちろん、業界あげて大きく間違った道に迷い込むこともあるのだけどね。

同じように、学会で経験と知識がある人々が一同に会して討議していると、全員が新たなものの見方に気付く瞬間があります。他人に自分の考えている内容を説明しているうちに、相手と自分とがほぼ同時に同じ考えに到達することがあるじゃないですか、あれと似た現象だと思います。もしかしたら、ヒトのニューロン同士は有線だけではなく、無線でも呼応できるのかも知れません。ニューロンの発火があまりに高周波だと、ある人の脳を超えて空気中に伝播して、他人の脳のニューロンを発火させたり...なんてね。ともかく学会や研究会を開いて、知識/経験ある人々の脳に、同時に同場所で同一問題について考えてもらうことは、とても意義深いことなのです。

昔、夜自宅に帰る途中、近所の公園に猫が沢山集まっている場面に出くわしました。ちょっと不気味でしたが、皆じーっとしていて仲よさそうな雰囲気でした。今から思うと、あれって猫たちの研究会だったのかも知れません。真剣に最近の人間界と猫界の情勢について討議していたのかも知れませんね。ということで明日から2日間、松本で神経好きな麻酔科猫たちの研究会を開きますので、のぞきに来てください。北杜夫も学んだ旧制松本高校跡での研究会なので、公園の散り桜を見がてら来て下さいな。お待ちしています。

2010年4月19日月曜日

車は急に止まれない

先週末、麻酔科学会の命を受け、神戸でBLS/ACLSの講習を受けてきました。前日、大学の新入1年生の合宿研修会に顔を出さねばならなかったので、夜10時過ぎに車で松本から中津川まで行って1泊して、翌朝神戸に着きました。神戸では朝8時から夕方まで、かなりタイトなスケジュールで2日間にわたり実習・講義を受け、何とか試験に合格してAHA BLS/ACLSプロバイダーコースを終了しました。やれやれ。

今回、BLS/ACLSのトレーニングを受けるのはそれなりに大事だと思ったね。5年くらい前に一度受けたのですが、その時は何となく反発を感じました。AHAか何か知らんが、アメリカの学会なんかにかぶれないで、心停止の状況に応じ現場の裁量に任せた方がいいんじゃないかと思っていました。でも不思議に今回は、ACLSを積極的に受け入れる自分がいたのですね。

200 km/hrの速度で車を運転して急ブレーキをかけると何が起こるか、日本の教習所では教えません。でもアメリカでは教えるところがあるらしいですね。勿論アメリカには教習所がないので、そうした疑似体験をさせる指導教官もいるという程度かも知れません。ともあれ、高スピードの車に急ブレーキをかけると、車体が横ブレした後回転し、回転軸の接線方向に滑って吹っ飛んでいくことを体験して、初めて同じ状況で生き延びるための対策を体で学ぼえようと思うはずです。同じように、蘇生という一刻を争う特殊な現場では、じっくりと考えていたのでは判断ミスすることを講習会で疑似体験し、パターン認識こそ蘇生の王道であることを教え込むのが、ACLSプロバイダーコースだということですね。

サルは医療行為をしません、せいぜい仲間の傷口を舐めるくらいでしょう。ということは医療行為は高度に発達したヒトの脳が行う作業です(当り前か)。しかし一刻を争う状況においては、脳に判断させないで「反射」に頼ったパターン認識こそがもっとも信頼できる反応ということになるかも知れません。脳というシステムは、時間が限られた状況ではしばしば判断ミスをするからね。ですからVFを見たら直ちに胸骨圧迫すべく体が動くように、古典的条件付けするのが今回のわれわれの目的だったという訳です。つまりACLSにおいて「パブロフの犬」になることができれば、コース終了&インストラクターへの道ということになります。なるほど、なるほど、妙に納得できました。5年前はあんなに反発したのに、evidence-based medicineという、これまた西洋由来の考え方が体に染みついたせいか(身に染みつかされたせいか?)、今回は「パブロフの犬」になるのに抵抗がなかったということですね。

でもさぁ、受講者は僕を含めて、結構年齢層が高かったので、年のせいかなかなか「パブロフの犬」にもなれないんだよね。つまり、餌が出てきても涎が流れず、おしっこをちびってしまったりする感じです。年を取ると条件反射も身につきにくいのかも知れません。ということで、特に医局の年配の皆さん、ACLSは早めに受講しておいた方がいいようですぜ。