2010年8月21日土曜日

風が乗越す 雲が乗越す 鳥が乗越す

毎年「一ノ沢ルート」ではつまらないので、今年は蝶ヶ岳→常念岳→常念小屋で、常念診療所(http://square.umin.ac.jp/jonen/)に行って参りました(下地図)。常念小屋は常念乗越(のっこし:標高の高い峠、尾根の鞍部)にあります。他の乗越としては、飛騨乗越、別山乗越、真砂乗越、室堂乗越などが有名です。常念小屋(http://www.mt-jonen.com/)の親方のYさんに教えてもらいましたが、常念乗越は文字通り、風が乗越し、雲が乗越し、鳥が乗越すところです。









確かに、2日目の早朝、穂高~槍ヶ岳に至る壮厳な風景を見ることができたのですが(下左図)、あれよあれよという間に常念乗越に風とガス(雲)が吹き上がり、僅か5-10分の間に眼前の槍ヶ岳は霧の中に消えて、ここが風と雲の通り道であることを実感しました(下右図)。





常念乗越に冬期設置した風力計は、風速60 m/sを振り切って壊れていたそうです。冬には人間がテントごと簡単に吹っ飛ばされる風が吹いているということですね。

この風に乗って渡り鳥も常念乗越を通るそうで、この鳥たちを狙って剣岳のオオワシ(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%82%AA%E3%83%AF%E3%82%B7)もこの地にやってきます。渡り鳥は内部にいる仲間が風の抵抗を受けにくいように、三角形の連隊を組んで飛んでいます。しかし常念越えで体力を消耗して、三角形の底辺から後方に遅れる鳥を狙って、オオワシは高所から一気に急降下して捕まえるそうです。つまり、風の通り道である常念乗越は、剣/立山から出稼ぎに来たオオワシや、その帰りを待っている子供たちの生存にも重要な場所だということになりますね。
  
地殻の変動により地層の盛り上がりとして山々が誕生し、その山々の形状から風の通り道ができて、この道を通って雲や鳥が移動し、自然と生きものとの営みが密接に関連していることにちょっと感動しました。

今回、早朝以外に槍ヶ岳をちゃんと見ることができませんでしたが、下山中に子供連れの2組の雷鳥たちに出会いました。そういえば、せっかく3000 m級の高地に逃げ住んだくせに、飛べなくなったために、ワシやタカの天敵の目を逃れて、ハイマツの中に隠遁している雷鳥も不思議な生きものですね。

いずれにしても、今回の山行を契機として、今後、原則日帰り(せいぜい1泊)を旨とする山行をしていく予定ですので、麻酔科山部の方々(それって誰だ?)も是非、時間を作って参加してくださいね。よく学び、よく遊びましょう。
【記録】
  • 三俣→(4時間)→蝶ケ岳ヒュッテ→(4時間半)→常念岳→(1時間)→常念小屋/診療所(1泊)

  • 常念小屋→(1時間)→前常念→(3時間半)→三俣