夏休み期間の信州麻酔科セミナー企画として、新潟大学のK先生、群馬大学のO先生に来ていただき、、麻酔科における基礎研究の面白さ(研究に関わった動機や留学の楽しさ)などを語ってもらった。
今、麻酔科に限らず、臨床医で研究を目指す人(MD researcher)が急激に減少しつつあるようです。この傾向は初期研修制度の導入後、研修医が都市への偏在していったことと、期を同一にしている印象があます。Anesthesiology誌への日本からの投稿数も激減しているようで、これらの原因として地方大学での研究活動の低下が挙げられるのではないでしょうか。というのは、これまで麻酔科領域においては都市部の大学や旧帝大だけでなく、むしろ地方大学から世界へと発信された研究が少なくなかったといえるからです。
ではどうしたらいいのでしょうか? 実はこの問題について今回の麻酔科学会で発表しなくてはならないのですが、まだ十分に考えがまとまっていません。しかし、K先生とO先生の発表を聞きながら、麻酔科学の研究分野において、早急な道州制の導入が必要かつ有効ではなかろうかと考えていました。
道州制とは、要は明治に廃藩置県でできた行政区分が、日本の人口の低下と都市部への人口偏在に対応できなくなってきたので、より大きな行政区域に再編して、それぞれの道州政府に独自の予算編成権を与えようとすることですよね。そうであれば、道州制の導入に伴い、(極論すれば)新潟大学、群馬大学、信州大学などがが関東甲信越州立大学に集約されて、それぞれ新潟分校、群馬分校、信州分校になるかも知れません。カルフォルニア大学ロサンジェルス校、サンフランス校、デービス校みたいにね。少なくとも教養課程や一部の基礎医学は一本化できるかも知れません。
どうせ行政側がそれを狙っているのなら、研究の領域でさっさと道州制を先取りして、現在の新潟大学、群馬大学、信州大学の麻酔科領域において、オーバーラップした無駄な研究は止めてしまい、あらかじめ研究プロジェクトのすり合わせをして、必要な部分について共同研究化すればいいのではないでしょうか。新潟のO先生にはin vitroの電気生理をしてもらって、群馬のO先生には創薬や免染してもらって、信州はin vivoの電気生理やればいいとかね。
研究すり合わせをするそれぞれの分校の研究主任を、アメリカ流にProf.あるいはPIという呼称すればいいと思いますね。こう考えると、K先生が代表世話人で始めたPMRG(Pain Mechanism Research Group)などは、時代を先取りした動きなのかも知れません。今後はこうしたグループで、文科省(特定領域、基盤S)や厚労省の科研費を共同で取っていく動きが出るかも知れません。あるいは麻酔科学会の呼びかけで、数年間の宿題研究などを設定して、プロジェクトを公募して、麻酔科学会学術部会として科研費申請するとかね。勿論、各組織内部・外部に競争原理を残しておかないといけませんが、MD researcherが少なくなっている以上、不必要な外部競争を排除し、各施設での研究費の節約を行い、より大きなプロジェクトにお金を集中させることが今後必要になるかも知れませんね。
うーん、結構面白そうな気がします。この方向で今回の麻酔科学会の発表スライドを作ってみようと思います。K先生やO先生の名前もスライドに入れされてもらってPMRGを宣伝したいと思います。
アメリカのように1大学に麻酔科医がレジデントを入れて100-300人いるようなところと臨床研究で競争するためには、日本は大学連合として対抗する以外なく、大学間の垣根を取り払い、基礎や臨床といった棲み分けも取っ払う必要があると思います。こうした発想って、結局、研究面における大学集約化、あるいは道州制導入と同じことを意味するのだと思うので、タイトルを研究のための道州制としてみました。