第56回日本麻酔科学会(神戸)が終わりました。今回は裏方さんととして学会本部に詰める時間が長かったので、実際にポスターや展示を見る機会は少なかったです。信州大学麻酔科のブースにすら行けなかったしね。それでも会場チェックをしていると、何千人もが集まる学会なのに、岡山大のM会長の人柄が会場の雰囲気に反映しているのを感じました、不思議ですね。学会本部では、M会長が教室員全員から好かれており、雰囲気のいい教室であることがよくわかり、教室の大小はともかくとして、目指すべき教室の方向性だと思いましたね。
さて今回の最大の収穫は、信州大学の医局員がシンポジウムで発表したことです。いつものことなのですが、学会前は自分の発表の準備と、不在時の仕事をあらかじめ片付けておくために、超多忙になります。にもかかわらず、教室の人達はぎりぎりにならないと、自分の原稿やポスターを持ってきません。ですから、結局、この教室員の原稿をチェックする時間はなく、素のままシンポジウムに臨んでもらいました。しかし自力で素晴らしい発表をしてくれました。実は座長をしながらハラハラしていたのだけどね。短期間で内容を理解して、よく準備してくれたと思います、皆さんやればできるのですよ。学会前は大変な勉強量とプレッシャーだったと思うけど、これがやがて血となり肉となるはずです。彼はシンポジウム中、緊張のあまり何も覚えていないと思うけどね。ご苦労さんでした。
僕も14-5年前、元ボスから初めてシンポジストに指名されましたが、ボスはまったくチェックしてくれず、やはり自力で臨みました。他シンポジストは高名な准教授や講師の先生方ばかりで、僕だけが医員だったので、緊張のあまり声が震えたのを覚えています。とはいえ、他の先生方が外国論文のreviewingに終始したのに比べ、僕は自前の(それなりに面白いと思う!?)データを発表したにも関わらず、誰からも相手にされませんでした。そして若造のせいか、総合討論でも一言も発言を求められませんでした。座長が僕を飛ばして、次の演者に発言を求めるので、ちょっと悲しい気がしましたね。しかし会が終わった後、座長の一人が寄ってきて、いい発表だったので是非論文にしなさいと優しい声を掛けてくれたのでした。その先生にはその後、掲載された論文の別刷りをお送りし、今では親しくさせていただいています。
学会に行くメリットは、他から刺激を受け、他と交流することです。こんな面白いことをしている人がいる、こんな新しい発想を持った人がいる、こんなに努力している人がいる....。臨床や研究の高みを求める若者は、自分の施設以外にも先生や仲間を見つけないといけません。なぜなら、若い時期に出会った先生や仲間によって、その後の人生が大きく変わってくるからです。そうした出会いの場として、学会があるのですよ。
専門医の点数のためと、同門や知り合いの人達だけとのclosedな酒宴のためだけに学会に行くのはつまらないことだと思います。他施設の先生方と交流し、将来自分の先生や仲間になるかも知れない人と出会いを求めるべきです。シンポジウムなどで発表すると急速に知り合いになれるので、これからも機会あれば教室の皆さんにシンポジストになってもらうように諮ります。そのためには、自前のデータが必要ですから、是非とも積極的に臨床研究・基礎研究してくださいな。
今年は手術を制限して、多くの教室員と一緒にASAに行く予定です。New Orleansは遠いけど、ASAが刺激となり、交流の場となることを期待しています。ジャズとケイジャンとだけの交流はいかん、ですよ。